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【NEWS LETTER No.286】                       聖学院の歴史 ― ルーツは140年前にあり!―(3/3)

なくなっていたかもしれない聖学院の危機

ーー聖学院にとってターニングポイントとなる出来事はありますか?

菊地 1932年、平井庸吉が聖学院中学校と女子聖学院の校長を兼任したことだと思います。それに先立つ1930年12月に聖学院中学校校長の石川角次郎が亡くなります。それは聖学院にとって大きな痛手で、後任が1年も決まりませんでした。平井庸吉はガイのもとで学んだ人物で、すでにクローソンの跡を継いで女子聖学院の院長(=校長)に就任していました。しかし、やはり石川角次郎の後任は平井庸吉しかいないということで兼任が決まりました。平井庸吉はそれから8年間ずっと両校の校長を務めます。その間、教職員の交流が積極的に行われ、今の聖学院の基盤になりました。

さらに1929年の世界恐慌の影響で、アメリカの教会からの援助が断たれます。それまで女子聖学院はアメリカからの援助で成り立っていましたし、聖学院中学校も多くの支援を受けていました。この危機に際し、教職員の俸給を減俸する一方、保護者会の理解と協力を得て授業料の増額を図るなどし、乗り切ったのが平井庸吉でした。平井庸吉によって、もともと別の学校だった男女両校が一体化し、経済的に独立したというのが一番のターニングポイントだったと思います。

 

受け継がれてきたものと受け継いでいくもの

杉淵 ガルストは農学の学校を出ていて、秋田ではその知識や経験を存分に生かせたと思います。自分が身につけたことをどうしたら周囲の人たちに還元していけるのか、秋田での伝道はそういうことを考え、今日の聖学院につながる教育のノウハウを学ぶ場にもなったのではないでしょうか。それが今日の聖学院のスタンスにも確実に受け継がれていると思います。

村松 杉淵先生がおっしゃったように、聖学院にはその地域に根ざし、地域の人々のために教育を行うという意思があるように感じます。偶然でもあるのでしょうが、東京の中心部ではなく周縁部に位置し、額に汗して働く人々に囲まれた中里の地に聖学院が立ち上がったことは、ガルスト以来の聖学院の志の表れのように思います。それを大事にしていってほしいです。

菊地 本当に私もそう思います。ちゃんと地に足のついた伝道をしてきたということだと思います。その自分たちのアイデンティティをしっかり持って、一歩一歩たゆまず前進していくことが大事だと思います。

赤田 「My life is my message.」の言葉のように命をかけて神様の愛を伝えてくれたことが、今も各学校各園に浸透していると思います。今度はそれを自分たちの次の世代に伝えていきたいですね。

菊地 ガルストが最期に言った「My life is my message.」という言葉、実はマハトマ・ガンジーも同じことを言っています。調べた限り接点がないので、たまたま同じ言葉を言ったのだと思いますが、ガンジーは同時にこうも言っています。「Your life, too, must be your message.」あなたの人生もあなたのメッセージにならなければならない。この記事を読んだ方には、ぜひそういう志を持っていただけたらうれしいです。

(取材日/2023年8月)

 

創立当時の女子聖学院の校舎と寄宿舎

                  聖学院の名前の由来

聖学院中学校の初代校長石川角次郎は、聖学院は「聖なる学院」ではなく「聖学」の院であると語っています。では「聖学」とはなんでしょうか?

1903年にガイが神学校を開いた時の校名は、最大の寄付者の名を冠してドレーク・バイブル・カレッジと名付けましたが、その後聖学院という名前になります。聖学院という名前は、当時ガイと石川角次郎と神学校教授の宮崎八百吉の3人で決めたであろうと推測されています。その背景には、当時ヨーロッパで「聖」についての価値をめぐる議論が盛んだったという状況があったようです。例えば学問と道徳と芸術の頂点を意味する真善美、それらをくくるさらなる上位のものとして「聖」があるという議論などがありました。ガイはアメリカに一時帰国し勉強しているのでヨーロッパのそういう動向を知っていたのではないかと思われます。この「聖」を学ぶのが「聖学」で、聖なる人(キリストの弟子「ディサイプル」)を育てるという思いに基づいて名付けられたのではないかという説があります。

ちなみに旧約聖書の元々の言語のヘブライ語では「聖」は「カードーシュ」と言い、この元々の意味は「分ける」という意味です。この世のものから分離されたものが聖なるものです。従って聖学院の「聖」も日本で浸透している「清い」というニュアンスとは少し異なります。

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