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【NEWS LETTER №285】& Talk 聖学院の各校連携(1/2)

ーー聖学院の各校連携ーー
今、幼少接続、中高一貫に加え、小中連携や高大連携が重要視されています。地域連携もますます浸透し、加えて組織のあり方としては学校法人、企業を問わず部門間連携という言葉をよく耳にするようになりました。しかし一言に連携と言っても、ただ単につながれば良い結果が生まれるとは限りません。一時的なもので終わってしまう例もあります。連携の有効活用が求められる中、連携とはそもそも何か、そこからどんな価値が生み出されていくのかを考えたいと思います。

鼎談 日向 貴之 × 田所 陽登子 × 早川 太脩

聖学院では、教職員から在学・在校生まで学校やキャンパスを越えて盛んに連携が行われています。
時間や場所、様々な制約や課題を乗り越えて生まれるいくつもの連携には、原動力となる強い「想い」があるのではないでしょうか?これまで様々な「連携」に関わってきた教職員・卒業生にその「想い」を尋ねました。


聖学院みどり幼稚園で聖学院大学児童学科(4月より子ども教育学科)の実習を行ったり、聖学院中高と女子聖学院中高が記念祭で合同企画を行ったり、聖学院ではかねてから学院内で様々な連携が行われてきました。加えて近年、聖学院大学の学生による防災講座が駒込3校でそれぞれ開催され、上尾と駒込の距離を超えた連携が生まれています。また駒込では聖学院小学校、聖学院中高、女子聖学院中高がSDGs、英語、ICTにおいて一つのビジョンを共有する教育デザイン開発センターが設置されました。防災講座を行なっている聖学院大学在学中の田所陽登子さん(聖学院小学校・女子聖学院中高卒業生)と、教育デザイン開発センターSDGs・ESD教育デザインユニット(以下、SDGsユニット)の早川太脩先生(聖学院中高)と日向貴之先生(女子聖学院中高)にお集まりいただき、連携について様々な視点からお話しをうかがいました。

■卒業生から在校生へ 連携により得られる気づき

ーー女子聖学院中高で開催した防災講座の内容を教えてください。

田所 私たちが体験した東日本大震災の話と防災グッズの紹介を中心に、女子聖学院中高の生徒に防災の大切さを再認識してもらう講座です。私たち大学生は震災当時小学生でした。私は聖学院小学校に通っていましたが、福島で震災にあった防災講座のメンバーもいます。福島と聖学院小学校の、小学生目線での震災体験を話すことで、女子聖学院中高の生徒たちに災害を自分ゴトとして捉えてもらえるのではないかと考えました。
 防災講座に参加した生徒に書いてもらったアンケートに「自分にも関係あると気づいた」「防災バッグを準備しようと思う」などの意見があり、やって良かったと思いました。

日向 卒業生が新しい学びを持ち帰り、今の在校生に伝えてくれるのは、本当にうれしいです。

ーー防災の話を先生ではなく、大学生から聞く意義は何だと思いますか?

日向 新鮮さがあると思います。外部の方、しかも大学生という近い年代の方だと程良い緊張感を持って参加できます。またその分野における今のリアルが聞けるのは重要です。教員はすべてのことに関する専門家ではありません。災害や被災地、防災に関して興味関心を持ち、体験したものを持って来てくれるというのは、教員では教えられない部分で、大きな意義があります。

早川 聖学院中高に限れば、プロジェクトやアクションに興味がある生徒は、発表することなど、アウトプットの力がどんどん伸びています。しかし根拠をしっかり持つことと、そのためのインプットが足りない印象があります。実際にアクションを起こしている年齢の近い大学生が来てくれると、インプットの大事さを実感できます。もう少ししたら自分も同じ立場になるという人たちの考えを目の当たりにするのは、とてもインパクトがあります。こういう機会がもっとあると良いと思っています。

■アクションでつながる 駒込3校の連携

ーー教育デザイン開発センターSDGsユニットについて教えてください。

早川 今の子どもたちは、SDGsのことを小学生の時から学びます。早くから知っている分、中学生、高校生になって行動を起こせる生徒が多いかというと、むしろSDGsという言葉に慣れすぎてアクションに至らないケースも多々あります。だからSDGsを知識だけで終わらせず、アクションまでつなげるのがSDGsユニットの目標です。さらには学内に止まらず学外でもSDGsに向けた働きかけができる人を育てることを目指しています。

日向 各校でそれぞれ独自に進めてきたSDGsの取り組みを、学院全体としてとりまとめ、一つの教育デザインにしていこうというのがもう一つの目標です。各校をとりまとめる一つ上の組織が必要となり、SDGsユニットが生まれました。

ーー具体的にはどういう取り組みをしていますか?

日向 生徒がSDGsを自分ゴト化して社会貢献につなげるプロジェクトとしては、1年目の2021年度は防災エコプロジェクト、2年目の2022年度は環境エコプロジェクトという取り組みを行っています。

早川 防災エコプロジェクトは気候変動・災害に対し、高齢者や弱い立場の人も考慮にいれた「誰一人取り残さない防災」を軸として、課題解決に取り組む活動です。2022年3月には中高生が主体となって、聖学院小学校の児童も参加して「防災エコキャンプ」を開催しました。その中で備蓄食品の乾パンをおいしく食べる調理法や節水の仕方を教える「防災食チーム」、災害時の脱出の仕方をシミュレーションゲームで教える「災害脱出・情報チーム」などが企画を実施しました。

田所 私の妹が女子聖学院中高の高校2年生で、去年の防災エコプロジェクトに参加していました。授業の関係で私は参加できなかったのですが、「防災エコキャンプ」には聖学院大学から防災講座のメンバーも参加していました。

日向 環境エコプロジェクトは、CO2排出量データで分析した学校の現状をもとに生徒が環境への課題を抽出し、その課題解決のためのアクションを起こしていく取り組みです。

ーー男子と女子が連携することで生徒たちにどんな変化がありましたか?

早川 聖学院中高の生徒は、ものづくりやことづくりに興味があり積極性はある一方、全体を調整するのが苦手な傾向があります。時にはやりっぱなし言いっぱなしに見受けられることも。女子聖学院中高の生徒はそこの調整力がとても優れています。男女一緒にやることで聖学院中高の生徒は自分たちに足りない力が見えてきて、とても良い学びの機会になったと思います。

日向 女子聖学院中高の生徒にとっては調整することが自らの学びになっていましたし、また聖学院中高の生徒にパワーをもらった部分もあり、そういうところでも学びを得ていたと思います。

早川 また積極的に参加できる生徒がいる反面、興味はあるけど自分から発言するのは苦手な生徒もいます。そういう生徒は引目を感じてプロジェクトから遠ざかってしまいがちです。1年目はそういう生徒のケアにも力を入れていました。そんな生徒が2年目の環境エコプロジェクトにも参加していて、しかも今度は自分が積極的に引っ張るようになっていました。そういう生徒を見ると成長を感じます

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