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&Talk 特集 ことばと生きる 聖学院の実践例 (3/3)

国語における論理性

ーー先ほど国語は論理的な教科というお話がありました。もう少し詳しく聞かせてください。

筑田 論理的思考が無かったら文章は書けません。感性で書くのは無理だと思います。文章は全体の構成はもちろん、主語述語が対応しているというようなミニマムなところから正確な論理性が必要になってきます。それを踏まえた上で比喩などが使えるようになり、表現の幅が広がっていきます。

安藤 論理性が無かったら文章が成り立たないというのは本当にその通りだと思います。物語文に関しても説明的文章に関しても論理性はあります。ところが一般的には、文学作品のような物語文には論理性が無いと思われていることも多いように思います。物語文は描かれている場面があり、その奥底に書きたいテーマや思想が存在します。そういう構造自体、論理性が無いと成立しません。書くことにとどまらず、読み取ることに関しても話すことに関しても構成を意識することが大事です。

筑田 論理的な文章を書く授業をしてもなかなか書けないことがあります。そういうときはディベートを使い、そこから小論文の書き方に導くなどの工夫をしています。「ディベートをやっていたおかげで論理的な文章を苦もなく書けるようになりました」と言ってくれる卒業生もいます。やはり社会に出てから求められるのは、筋道の通った文章を一定量書く力です。高校卒業までに生徒たちが、ある程度身に付けてくれたら良いなと思っています。

卒業後の再会の言葉で生徒の成長が分かる(筑田)                  試行錯誤して自分の感情に当てはまる言葉を探してほしい(安藤)

ーー国語を通して生徒に身につけてほしいことはなんですか?

筑田 やっぱり卒業生と会った時に、素敵な言葉の使い手になっているとうれしいですね。社会に出てから、どのように頑張って、どんな言葉を使っているのか、再会した時の言葉で分かります。ですから生きて働く力として、言葉を上手に使える人になってくれたらうれしいです。

安藤 生徒を見ていて、もう少し語彙力を磨いてほしいと感じています。言葉は記号です。記号がその時の自分の感情にぴったり当てはまるということはなかなかありません。ですから試行錯誤が必要です。人は何度も試して、苦しんでもがきながらようやく自分の感情なり相手の感情に即した言葉を見つけます。学校にいる間にそうした経験をたくさんしてほしいと願っています。

少年の日の思い出


ヘルマン・ヘッセの小説。主人公はチョウの収集と標本に夢中になる少年。彼は両親に標本箱を買ってもらえないため潰れたボール紙の箱にチョウを収集していた。一方、完璧な道具と標本技術を持つエーミールという少年が近所に住んでいる。主人公は一度その少年に自分の標本を見せたことがあるが、酷評され、それ以来距離を置く。しかしエーミールが希少なチョウを捕まえたという話を聞き、主人公はどうしても見たくなってエーミールの家に忍び込む。そしてそのチョウを盗んでしまい、挙句粉砕してしまう。そのことをエーミールに打ち明け謝罪すると「つまり君はそんなやつなんだな」と冷淡に言われる。主人公は一度壊れたものは二度と元通りにはならないと悟る。

トロッコ


芥川龍之介の小説。8歳の主人公、良平はトロッコに強く惹かれる。ある日二人の土工に一緒に押して良いと言われ念願叶ってトロッコを押して、下りでは乗ることができる。しかし今まで経験したことがない程遠くまで来てしまい次第に不安が募る。そんな中、土工に「われはもう帰んな」と言われ、突然一人で歩いて帰る。暗い道を一人で走って帰り、ようやく家に着くと不安だった気持ちが溢れ出し涙が止まらなくなる。26歳になった良平は校正の仕事をしながら子どもの日の出来事を思い出す。


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No.287【地域と共にあるということ】 No.286【聖学院の歴史 ― ルーツは140年前にあり!】