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&Talk 特集 ことばと生きる 聖学院の実践例 (2/3)

教え方に余白がある国語科

ーー両校の特徴をうかがうと、国語には4技能にとどまらない広がりを感じます。

安藤 他教科は教科書に教材と教えるべき内容が掲載されています。しかし国語は物語文と説明文、つまり教材の方しか載っていません。そのため何を主軸に授業を展開するかは教員に委ねられているところが大きいのです。
 私自身、国語は何を教える教科なのだろうと大学院までずっと悩み続けてきました。今では、国語は捉え方の幅が広いからこそ、自分で論文や実践報告を読むなど試行錯誤して授業を作っていくものなのかなと思っています。

筑田 そうですね。実は国語の教員が10人いれば、授業も十人十色です。言い換えれば教員ごとに様々な学びがあるとも言えます。だから生徒には中高6年間の中で、極力異なった教員の授業を受けて視野を広げてほしいと思っています。

型通りにやることで表現の仕方を理解し、その型の中で創意工夫が生まれる

ーー筑田先生はディベート部の顧問を務められています。ディベートとはどのようなものですか?

筑田 賛否が大きく割れるようなテーマについて賛成か反対の立場で議論し、審判が勝敗をジャッジします。自分の意見は置いておいて肯定側にも否定側にも立ちます。つまり物事の両面をメリット、デメリットという観点で検証していくことになります。お互いを尊重することにつながりますし、自分の視野や価値観も広がります。
 また先ほど安藤先生がおっしゃっていたクリティカルシンキングはディベートにも通じる話です。ディベートでは「みんなが言っているから正しい」というように思考停止することは許されません。例えば自分の主張を「憲法で禁止されている」と憲法を根拠にした場合、「それなら憲法を変えます」と言われたら根拠があっさり崩されてしまいます。憲法があるから許されないのではなく、なぜ憲法で禁止されているのか、そこまで踏み込んで考えないと議論になりません。

ーーービブリオバトルとはどのようなものですか?

安藤 自分の好きな本を持ち寄り、持ち時間5分でその本を紹介し、参加者の投票で優勝(チャンプ本)を決めるコミュニケーションゲームです。あらすじや説明だけではなく、自分がどんなところに心を動かされたのか、どこが印象的だったのかを話すことがポイントとなります。私が現代文を担当した年は必ず授業に取り入れています。ビブリオバトルとは別に、授業の冒頭で生徒全員にスピーチを課しています。スピーチはスライドが使えますが、ビブリオバトルは本以外のものが使えません。加えて5分きっかり使い切ることがルールです。しっかり準備してアドリブにも対応しなければいけません。プレゼンテーションやスライドが得意な子がスピーチで輝くのに対して、ビブリオバトルはスピーチで目立つタイプではない生徒がチャンプ本に選ばれることがあります。また、普段の教室では見えない生徒の一面がビブリオバトルを通して見えることもあります。そういう生徒の、内面に近いものに触れられるところが国語の醍醐味かなと思います。国語科教員をしていて楽しいところです。

筑田  ビブリオバトルは女子聖学院中高でも取り入れています。ディベートもそうですが、型があるというのは良いことだと思います。自由に話しなさいと言われると結構困ります。まずはビブリオバトルの型通りにやることで話し方が分かります。次にそこから自分らしさを出していく。制限があるからこそ、その制限の中で創意工夫という自由を得ます。 同じように読み方の型、書き方の型、聞き方の型などいろいろな型があります。例えば読み方の型でいうと、中1の教材「少年の日の思い出」を読むにあたって「最初に少年という言葉が出てくるよね? 少年は子どもだよね。子どもが出てくる話は成長の物語の確率が高いんだよ。成長の物語というのは子どもが壁にぶつかって、それを乗り越えようとする話か、現実の厳しさを突きつけられる話かどちらかだよ」と読み解き方を教えることができます。その型を用いて今度は「トロッコ」を読むことができます。また、一つの型を知っていると、その型から外れた別の教材を読んだときに、その型からどのくらい外れているのか生徒は気づけるようになります。そこに作家の工夫があることも見えてきます。それが生徒の読解力につながっていくと考えています。


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