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&Talk 特集 地域と共にあるということ(2/3)
地域での活動を、 学生の学びに還元することが重要
ーー地域連携にどのように取り組んでいるか教えてください。
青木 私たちラボたまは、金融機関の子会社として地域連携と地域の課題解決に取り組んでいる会社です。銀行のネットワークを活用し、住民、企業、行政、教育機関など様々な方々をつなぎ、地域の課題解決を目指しています。このような地域連携のハブ機能が私たちラボたまの役割です。
小池 社会が大きく変化する中で、大学は学内だけでは教育研究を完結できない時代になっています。大学を地域に開き、地域の評価を受けながら、地域になくてはならない存在として認知してもらう必要があると思います。大学の知的、人的、物的財産を学生のために使うとともに地域に開いていくことを、学長としてやっていきたいと思っています。
その一環として、埼玉県高齢者福祉課と協定を結び、埼玉県在住の55歳以上の人を対象にリカレント教育講座(大学の開放授業講座)を実施しています。これは大学の一部の授業を一般の方に開放する制度です。現役の学生と中高年の人たちが同じ教場で同じ授業を受ける。異年齢が共に学ぶことで、教育的感化が生まれることを期待しています。地域の方は生涯学習の一環として学び、学生は生涯学び続ける成人の姿を間近で見ることで、その姿勢を自分のライフデザインに生かすことができます。
また、企業が取り組んでいる社会貢献活動に学生を参加させたいと考えています。フードパントリーや子ども食堂に取り組んでいる地元企業から、「問題意識を持っている学生にボランティアとして来てもらえませんか?」というお話をいただいています。私たちもぜひ協力していこうと思っています。
若原 最近ありがたい事に SDGsの取り組みでも注目していただいて、多くの企業からオファーが来ています。
青木 地域の方たちと課題解決を考えるときに、ワークショップを行うことがあります。その中に大学生にボランティアとして入ってもらうと、新しい視点や感性が生まれ、ワークショップの活力が1段、2段上がります。地域への大学生の参画は非常に意義があると感じています。
小池 大学は、学生をマンパワー提供という意味だけでボランティアに参加させるのではなく、現代社会の課題、地域の課題に直に触れる機会なのですから、ボランティアの経験を彼らの学びに結びつけていくべきだと思います。そうすることによって、学校にも地域社会や企業にもメリットが生まれ良い関係になります。それが私が考える地域連携のイメージです。
しかしこの関係を成立させるには、調整窓口が必要です。学生が地域活動に参加するには企業、団体側の連絡窓口や交通費などの条件設定が必要です。また、大学側も学外での貢献活動が学生にとって有益かどうか判断しなければなりません。そこで調整、すなわち「つなげる」役割が重要となってきます。企業、団体に関しては、ラボたまさんがその役割を務めてくださっていると思います。大学側は、地域連携・教育センターの他に、ボランティア活動支援センター、サステイナビリティ推進センターなど連携を推進する窓口となる部署の整備を進めています。
若原 小池先生がおっしゃる通り、地域連携は課外活動ではあっても教育の一環です。学生にとって価値のある活動につなげたいと思っています。聖学院には地域や企業と大学をつなぐ各センターにコーディネーターがいて、個々の学生にあった活動につなげつつ振り返りや学習の機会を設けています。その機会をさらに増やしていくことや、大学の正課のカリキュラムとどう上手く組み合わせていくのかが今後の課題です。
青木 今日(この座談会の前に)色々お話を聞いて、聖学院大学がボランティア活動に力を入れていることに感銘を受けました。身近なところでボランティア活動をしている学生がいると、周囲の学生も少しずつ意識が高くなります。そして自分から地域に出て行ってみよう、そこから何か学びを得ようという動きにつながります。聖学院大学の取り組みは地域にとって良いインパクトになっているという印象を持ちました。
廃校跡地の利活用から見える 学校の存在意義
ーー埼玉県の地域課題について教えてください。
青木 埼玉県は高齢化が速いスピードで進んでいます。若年層がどんどん減っていく中で学校も無くなっていきます。その学校の跡地をどう地域の活性化に使っていくかというようなお話もかなりいただきます。
若原 基本的に学校は公共施設なので、廃校跡地の活用は行政の役割です。ただ行政だけでは対応しきれないところがあります。そういう所を民間の、特に企業の視点から取り組むことに意義があると思います。
青木 埼玉県西部の小川町で約1300世帯が暮らす住宅団地の中の小中学校が廃校になることに伴い、その跡地利活用の相談をいただきました。地域の方々や事業者と協議を進め、校舎の中に新しいビジネスが生まれるコワーキングスペースやシェアオフィス、周辺住民が集まれるカフェができています。地域には独居老人の方も多いので、高齢者向けサービスの提供でより安心して暮らせる地域にしていくことや、お試し居住スペースを作って移住希望者に実際に生活していただき、気に入ったら団地の空き家を買ってもらうということも考えられます。そういった形で小中学校跡地を核にして、周りの団地も含めていろいろな人が交流することで地域の活性化を図っています。
若原 学校は本当に地域にとって重要な存在で、単に子どもたちを教育する施設ではありません。地域の人たちの象徴であり、かつて通った場所であり、記憶が蓄積された場所でもあります。子どもが減ったなら廃校にして、別の大きな学校に通えば良いということではなく、その地域の象徴が一つ無くなるという大きな問題です。そのため廃校の跡地利活用に際して、地域の拠点としての機能をしっかり維持していこうという取り組みはとても重要です。
小池 コミュニティの中でその学校に通っていた、そこで生活していたという記憶が、その地域の人たちの絆になっています。「あの学校を卒業したよね」という会話が年齢を超えて共有できる。やはり学校には、その地域の人たちをつなぐハブとしての機能があると思います。
青木 学校は地域の方々の思い入れが強い場所でもありますし、逆に言うと使い方によっては人が集う、非常にポテンシャルのある「場」だとも捉えられます。そういう意味でも利活用の進め方はとても大事だと思います。