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論理国語_ことばと生きる 聖学院の実践例/女子聖学院中高FOCUS
語るべき「ことば」とは何であるのかを探す学びの時間
菅のの香先生は高校2年生の「論理国語」の授業を担当しています。高校2年生は、中1~高1の間「聞く・話す」「演劇ワークショップ」「ディベート」「ビブリオバトル」といったコミュニケーション技術を高める授業に取り組んできました。女子聖学院が教育目標として掲げる「Be a Messenger ~語ることばをもつ人を育てます~」の〝メッセンジャー"としての素養を育んできたと言えます。他者の意見を受け止めること、安心して自分の意見を伝えることができます。そして、次の段階となる高2の「論理国語」では、語るべきことばとは何であるのかを探していきます。それは、「世界で起こっている様々なできごとと自分自身とのつながりを見出し、建設的な意見を持つことです」と菅先生は言います。
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授業で扱う題材は、各自の判断で先生が教科書から選びますが、菅先生は生徒たちのこれまでの常識や価値観を揺さぶるような、意外性のある、そして少し難しい文章を選ぶことにしているのだと言います。生徒たちの手持ちの常識だけでは太刀打ちできない文章に向き合うことが新しい視点を得ることになり、そして何より真剣に学ぶ姿勢につながるからです。
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授業のテーマは、定期テストのタームごとに設定しています。例えば2学期の中間試験までの期間は、「近代化と共同体の崩壊」をテーマにして菅先生が選んだ「市民社会化する家族」(今村仁司)と「真理の探求と民主主義」(河野哲也)という2つの評論文と、カフカの小説『変身』を題材としました。一見無関係に見える3つの文章に共通するのは近代化によって生じた核家族化、個人主義の進行と、それに伴う課題です。虫になってしまった主人公ザムザの面倒を見たのは、家族の中で妹だけでした。その姿から、ヤングケアラーを連想した生徒がいました。他には、「『山月記』では主人公は虎になるが、『変身』ではなぜ虫なのか、虫は何を象徴しているのか」という〝問い"を持った生徒もいました。
菅先生の「論理国語」の授業は、生徒が情報をインプットしたときに自分の中で受け止める場所を作る時間なのだと言います。
おすすめの1冊『地球にちりばめられて』
菅先生の生徒へのおすすめの小説は、多和田葉子さんの小説『地球にちりばめられて』(2021, 講談社文庫)。母語とは一体何だろうと考えさせられる小説です。女子聖学院図書館が発行する「あなたへの贈り物–推薦図書目録-」にも菅先生の紹介文が掲載されています。