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聖学院大学聖学院中高TOPICS

Collaboration 聖学院中学校・高等学校 × 聖学院大学

芦澤 弘子
聖学院大学ボランティア活動支援センター ボランティアコーディネーター(専門職)。東京農業大学造園科学科卒業後、旅行会社、市町村のNPO支援センター勤務を経て、2012年度より現職。市民社会をつくるボランタリーフォーラムTOKYO2023実行委員長を務めるなど、学内外でボランティアの輪を広げる活動に取り組んでいる。

伊藤 豊
聖学院中学校・高等学校 国語科教諭、テニス部顧問。1968年横浜市生まれ。立教大学文学部卒業。「体験学習の学びを教室に」をモットーに、学習者中心の授業研究と実践に取り組んでいる。2010年度よりタイ研修旅行を担当し、事前・事後学習プログラムの作成、引率、レポート集の発行などを行っている。
校務とは別に、山岳民の無国籍の高校生を支援するプロジェクトに参加中。

誰かのために本気になれる その気持ちが連携の原動力


聖学院中高には、タイ研修旅行というタイ北部の村に約2週間滞在して、生徒が現地の社会課題に取り組むプログラムがあります。任意参加でありながら定員枠を大きく超える申し込みがある大人気研修です。このプログラムを取りまとめている聖学院中高の伊藤豊先生と、聖学院大学ボランティア活動支援センターの芦澤弘子さんが、2013年のタイ研修旅行で出会います。課題解決とボランティア活動、この掛け合わせが、その後両校に様々な連携を生み出しました。

 

 

ーー連携のきっかけとなった2013年のタイ研修旅行について教えてください。

芦澤:当時、聖学院中高のタイ研修旅行がとても素晴らしいと聖学院大学で話題になりました。大学に取り入れられることがあるのではないかと教職員が視察に行くことになり、私もその一人として派遣されました。

伊藤:芦澤さんが最終日、振り返りのワークショップをやってくださったんですよね。

芦澤:本当は見学させていただくだけの予定でした。でも実際に行ってみるとじっとしていられず、私にもできることがあるのではないかと「振り返り」を提案しました。研修旅行の感想や、何を学んだのか、学んだことをどう実生活、学校生活に生かしていきたいかということを生徒に言語化してもらいました。

伊藤:タイ研修旅行は生徒たちの自由度が大きい分、学びもいろいろな方向にいきます。そのままだと拡散するばかりで何も得られないのではと危惧し始めていたところだったので、振り返りのワークショップを見て「こういう形があるのか」と感銘を受けました。生徒たちの内側から湧いてくる気持ちやディスカッションで出てきた言葉をちゃんと拾って進んでいけるので、このやり方は良いと思いました。

芦澤:私の方も、生徒の主体性に任せつつも、ここぞというときは大切なことを生徒に問いかける伊藤先生の絶妙なバランスを目の当たりにして、ぜひいろいろ学ばせてほしいと思いました。

(新型コロナウイルスの影響で中止されていたタイ研修旅行。3年ぶりの開催です。料理プロジェクトの生徒たちが中心になって、全員で手打ちの天ぷらうどんを作りました。一日がかりの料理でした。)

 

 

ーー聖学院大学と聖学院中高の連携にはどのようなものがありますか?

芦澤:このタイ研修旅行がきっかけで、聖学院高校の生徒会長に「ボランティア活動を校内で広げたいけど、どうしたら良いのかわからない」と相談を受けました。帰国後、何度かメールのやりとりを重ね、北区の社会福祉協議会が紹介するボランティア活動が高校生には安心安全であることや、まずは生徒会の範囲内で実施し、スモールステップで広げていった方が良いことなどをアドバイスしました。この件で、生徒会顧問の先生ともやりとりさせていただき、より一層大学と中高が活動のコミュニケーションを取るようになりました。

伊藤:聖学院大学の釜石でのボランティア活動に中高の生徒も同行させてもらっています。逆に聖学院大学のボランティア活動をしている学生に中高に来てもらって、3月11日に震災について考えるというイベントも行いました。聖学院中高には、L.L.T.(※)という授業があります。自分について考え、それを他者に広げ、最後は社会に関心を持つというコンセプトの中学の授業です。社会がまだよくわからない中学1年生に社会を感じてもらうため、聖学院大学の学生に協力してもらい、ボランティア活動の話をしてもらいました。彼らの体験が中学1年生には、社会と自分とのつながりをイメージするきっかけになったようで、生徒から具体的な質問がたくさん出ました。

芦澤:これまで様々な連携を続けてこられたのは、タイ研修旅行で伊藤先生の社会課題に真っ直ぐに向き合う姿勢や生徒への情熱に触れられたからだと思います。タイで生徒のことをたくさん聞いた記憶があり、先生の大きな愛を感じました。私にとって連携で一番大切なのは、そこに本気の思いがあるかどうか、そういう方と手を取り合うことができるかどうかです。

伊藤:釜石に同行した時、聖学院大学の学生が東京からのバスの中でずっと、防災の伝え方について話し合っていました。また自分たちのイベントで、現地で被災したお寺の住職に震災の体験談を話してもらう企画があり、その依頼に行った際も、学生は住職へのご負担を思いやって涙ながらにお願いしていました。そんな姿を見ているとジーンときます。ぜひうちの生徒に彼らの姿を見せたい、会わせたいと強く思いました。

(聖学院大学の復興支援ボランティアスタディツアーで行った釜石での活動の様子。写真は伊藤豊先生も下見に同行した2019年のものです。学生たちは、子どもたちにも防災を啓蒙するため防災戦隊マモルンジャーというヒーローショーを企画しました。)

 

 

ーー今後の展望を教えてください。

伊藤:今度は聖学院大学の大学生対象のタイ研修旅行をやりたいです。大学生だからできることがきっとあります。

芦澤:私は聖学院中高の生徒に大学に来てもらって、大学生相手に授業をしてほしいです。中高生から刺激を受けることがたくさんあると思います。

(取材日/2023年2月)