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【NEWS LETTER №284】& Talk 原点から未来へ(2/2)

■私たち一人ひとりが 歴史とのつながりを再確認する

ーー村瀬先生はドイツのハイデルベルク大学を卒業されています。海外では周年行事をどう迎えていますか?

村瀬 私が通ったハイデルベルク大学はヨーロッパの中でも特に古い大学で600年以上の歴史があります。キャンパスと街の間に境界線がなく、昔ながらのロマンチックな街並みの一部として大学の校舎が点在しています。地域と大学が密接につながっていて、大学の歴史がそのまま街の歴史でもあるため、大学の周年行事は同時に町の記念として祝われます。
 聖学院も駒込は、駅からの通りが「聖学院通り」という名前になっているように地域と学校が一体化していると思います。大学もこれを機に地域の方に来ていただいて、聖学院をもっと知って身近に感じてもらいたいと思っています。地域と結びつき一緒に祝える120周年になると嬉しいです。

清水 120周年ということは、この地域の方たちが生まれる前から聖学院が駒込にあったわけです。太平洋戦争の戦時下では、防空壕がほとんどなかったこの辺りの方々の避難所になっていたそうです。土地の方々は聖学院を大事なものとして、あるべき学校として、とても愛しておられたと聞いています。ですから、私も街の人たちと一緒に120周年を何らかの形でお祝いできれば良いなと思います。

ーー在校生にとって120周年とはどういう意味があると思いますか?

今村 幼稚園、小学校の子どもたちにとっては120周年といってもやはりイメージしにくいものではあります。ただお友だちが怪我をしたら自分のことのように感じて励ましながら保健室まで付き添ったり、悲しいことがあったお友だちのために祈ったりしている子どもたちの姿を目にすると、建学の精神が子どもたちにも受け継がれているのを感じます。ですので自分も長い歴史を紡ぐ一員として、大好きな聖学院の120回目の誕生日を一緒に祝うという気持ちで、子どもたちが120周年を迎えてくれたら良いかなと考えています。

村瀬 聖学院が120年続いているその背景には、先生方の努力と同時に、その教えを具現化してきた子どもたちや生徒、学生の存在も大きいと思います。彼らも歴史の一部です。勉強や様々な活動を通して、聖学院の歴史を支えている、自分には支える力があるんだということを子どもたち、生徒や学生には知ってほしいです。これは彼らのアイデンティティにもつながります。

■創立時から大切にしてきた 「人を育てる」ということ

ーー聖学院の軌跡について教えてください。

清水 119年前、今の文京区本郷3丁目の近くに聖学院神学校が作られました。聖学院の始まりです。3年後に最初の校舎が手狭になったため、現在の駒込に移転します。その当時駒込は全く開拓されていない椎木林だったそうです。校歌が「椎木茂る〜」という歌詞から始まるのもそういう理由です。そこを切り拓いて校舎を建て、神学校と英語学校と並んで普通教育を始めます。このように元来が、神を仰ぎ人に仕える牧師育成の学校だったため、普通教育においても人格教育を重視した学校になりました。そしてそれは今も変わりません。

ーー卒業生として聖学院にはどんな印象をもっていますか?

村瀬 私は聖学院中高で6年間を過ごしました。聖学院が他の学校と違うところは、学校教育の中に祈りがあることだと思います。世界では普通のことですが、日本では祈る姿を見ることはほとんどありません。教育の場で「祈る人がいる」ということを知ること、「誰かに祈りながら生活する」ということは、それがすぐに信仰を伴うかどうかは別問題として、人間教育としては極めて重要なことだと思います。

清水 私は、聖学院で人を大切にするということを学びました。もともとキリスト教とは全く無縁でしたが、林田先生(※2)の聖書の授業を受けて、こういう世界があって、そして先生の背後に神様がいらっしゃるということを感じました。また林田先生は、生徒をとても大切にし温かい言葉をかけられる先生でした。こういう人になりたいと思ったのが私が教師を目指したきっかけでした。

今村 聖学院はのびのびと主体性を育んでくれる場所だと、女子聖学院中高在校時を振り返って感じます。女子聖学院中高の一番大きなイベントとして運動会があります。卒業生のほとんどの方が思い出として語られる行事です。意見を出し合うところから、準備、当日の進行まで全て生徒主体で進められます。女子聖学院中高の運動会は3色のチームに分かれて競い、高校は学年で色が分かれますが、中学はクラス内の抽選で各色のチームに振り分けられます。その中学生の指導も高校生が行います。生徒にとってはとにかく熱が入り盛り上がる行事で、私もみんなで過去のDVDを見て勝つための研究をした記憶があります。一つの目標に対して生徒全員で協力して進めていくことを通して、私の中で主体性が育まれたと感じています。

清水 聖学院中高が22年前に校舎を建て替えた時、教育にも変化がありました。校舎が新しくなるのに教育が今までのままで良いのだろうかと見直しが行われました。それまでは教員が個々で奮闘していましたが、その頑張りを教員全体で共有するようになりました。そして一つの学年が良くなったらそれを他の学年に普及させようという考えに変わりました。また林田先生がオンリーワン教育を立ち上げ、なんのための学校なのかを考え、一人ひとりの生徒を改めてしっかり見ていくことになりました。それが体現され変わってきた歴史があります。
 私は120周年を機にそれぞれの学校の歴史と伝統にもう一度目を向けてもらいたいと思っています。それぞれの学校に転換期があります。そこに思いを馳せ、我々の先人が、先輩の教職員が本当に苦労して受け継いできたバトンを次の100年に渡していく必要があると感じています。

ロゴマーク決定までの経緯を振り返り、込められた想いを語り合う

聖学院ビジョンも第二期へ 次の100年に向けて

ーーこれからの聖学院に期待すること、受け継いでいってほしいことなどを教えてください。

清水 私は聖学院を本当に素晴らしい学校だと思っています。ただ、まだまだ聖学院の良さが知られていない気がしています。120年前も今も共通していることは一人ひとりの人格を愛するということだと思います。それは聖学院教育の根幹です。これからはより一層広報に力を入れ、幅広く聖学院の教育はこういう教育なんだということを知っていただく、それができたら良いなと思っています。
 また私は法人全体の方向性である聖学院ビジョンを話し合う「理事長室会議」の委員でもあります。120周年である2023年は聖学院ビジョンが第二期に入ります。キーメッセージについても改めて議論がなされましたが、第一期で掲げた「将来の日本および国際社会に貢献する人間を育成」「『誰一人取り残さない』世界の実現を目指して」は変えずに更に推進していくことが確認されました。

村瀬 私が聖学院中高を卒業してから30年、社会には様々な変化がありました。グローバル化もその一つです。今の日本は様々な国や文化に背景を持つ人々が一緒に生活をし、支え合っています。教育においてもグローバルという視点は必須になっています。また社会変化の結果、SDGsへの取り組みも重要です。そして何よりインターネットやスマホなど情報化が進みました。コロナ禍により特にここ数年は加速したと思います。しかしICTには良い側面もあれば、危険な側面もあります。デバイスをどう扱い、その上で社会とつながりを維持していくのかを子どもたちに教える必要があります。今聖学院が法人として取り組んでいるものの中でも国際、SDGs、情報教育の3つは極めて重要だと思います。駒込にはこの3項目を小学校、女子聖学院中高、聖学院中高の3校連携で研究する「教育デザイン開発センター」が設置されています。大学にも「グローバルキャンパスセンター」「サステイナビリティ推進センター」「教育開発センター」があります。物理的な距離の問題で今まで難しかったものの、120周年を機に今後は駒込と大学で連携して国際、SDGs、情報教育を推進していけたらと思っています。

今村 小学校、幼稚園では、まず「神を仰ぎ 人に仕う」建学の精神を育むことが大切だと思っています。SDGsの活動や社会貢献はとても大事なことで、高学年くらいになると授業でも取り上げているのですが、幼い子どもたちにはやはり難しい事柄です。まずはお友だちのことを思ったり、お友だちのために祈ることなどから少しずつ始めて「人に仕える」という気持ちを理解していってほしいです。これからもそういう姿勢を続け、それが聖学院ビジョンの「誰一人取り残さない」世界の実現につながったら良いと思います。

清水 やはり物より精神の方が、人に伝わっていくのだと感じます。聖学院で学ぶ子どもたち、生徒、学生が先生や職員から目に見えない精神を受け継いで卒業していってほしいです。さらには社会で世界で、それを実践してくれたらと考えています。

聖学院NEWS LETTER No.284
取材日/2022年10月

1 Jamboardは、Jamboardデバイス(G Suiteサービスと連携する55インチのデジタルホワイトボード)ウェブブラウザ、モバイルアプリのいずれかを使用してリアルタイムで共同作業できるデジタルホワイトボードです。 

(出典:google/Jamboard Help 

 https://support.google.com/jamboard/answer/7424836?hl=ja 

 

2 聖学院中高第八代校長 林田秀彦先生。 

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