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キリスト教人間学/聖学院大学 focus

キリスト教教育を通じて人生の指針となり得る価値観に触れる

「キリストが、『汝の敵を好きになれ』と彼(キリスト)がいい給わなかったのは、われわれの幸いとするところであろう」。聖学院大学は学部ごとの固有性を持ったキリスト教関連の必修科目があります。心理福祉学部には「キリスト教人間学」という授業があり、冒頭の一文は「平和の倫理」というテーマで行われた授業で紹介されたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア(以下キング牧師)の言葉です。

今回の授業では、平和とは何かをキリスト教の視点から考察する内容で、平和の定義がイエス・キリストの出現でどう変わったか(旧約聖書と新約聖書の違い)、イエス・キリストの唱えた平和とは何かを講義しました。旧約聖書では過度な報復を防ぐ目的で、同害報復(※)が認められていますが、イエス・キリストは復讐の連鎖を断ち切るため、復讐そのものを禁止しました。それが「汝の敵を愛せ」という言葉です。この言葉は同時に「愛敵の姿勢をもって抵抗する」ことも意味し、あらゆる暴力が許されないというメッセージを敵に示すことも意味しています。授業を担当されている五十嵐成見チャプレンは「武力によらない戦いによって勝ち取られる平和です」と解説しています。 ※同一の加害によって報復を行う刑罰

この非暴力主義的抵抗の実践としてキング牧師の公民権運動が紹介されました。興味深いのはキング牧師が「汝の敵を愛せ」という言葉について「敵への愛は神の命令であり、神の要請に従おうという意思が大切」と説明したという話です。つまり感情としては「好き」になれなくても良い、相手を受け入れ認めようとする意思を持ち続けることが大事であるということです。そしてその意思の支えとして信仰の必要性を説いています。この説明においてキング牧師の冒頭の言葉が紹介されました。

この言葉は、意思を持ち続けるという努力そのものを肯定しています。そこに光があるのではないかと思います。それは平和に限らずありとあらゆる困難へ立ち向かう勇気にもつながります。学生は、聖学院大学のキリスト教教育を通してキリスト教の価値観に触れ、その後の人生の指針となりうるような学びや気づきを得ているように思います。最後に五十嵐チャプレンは「キリスト教を通して、学生が深く社会について考えるきっかけになればと思っています」と語っていました。

※掲載内容は取材当時のものです。

「キリスト教概論」
聖学院大学には「キリスト教概論」という必修科目があります。新型コロナウイルス以前は、教会に見学に行ってレポートを提出する課題がありました。教会に行ったことをきっかけに良い出会いがあり洗礼を受けた学生もいるそうです。五十嵐チャプレンは「キリスト教学校の講義は伝道の可能性をもっていると改めて実感しました。講義がすぐに信仰に結びつかなくても、社会に出てから教会に興味をもつことにつながりえます」と言います。