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聖学院小学校60周年記念対談

在校生の活躍特別企画
聖学院小学校 60周年記念対談

「卒業生から、今の子どもたちに伝えたいこととは何か?」

聖学院ニュースレターNo.279 取材日/2021年1月


聖学院小学校は昨年創立60周年。 旧校舎で学び、一昨年、卒業生として母校で防災教室を開催した聖学院大学の山下佑太さんと 山下さんの当時の担任であり現在の校長である佐藤先生に 聖学院小学校の軌跡と防災教室(防災講座)についてお話を伺いました。

(左から)●山下 佑太:聖学院大学心理福祉学部3年生(2021年1月現在)。聖学院小学校、聖学院中学校・高等学校を経て、聖学院大学に入学。聖学院大学1年時から岩手県釜石市でボランティアを行う。2019年9月に母校の聖学院小学校で防災講座を行った。●佐藤 慎:聖学院小学校 校長。1979年より学校法人聖学院において教鞭をとる。女子聖学院中学校・高等学校教諭(社会科)、聖学院小学校教諭を経て、1990年聖学院アトランタ国際学校の開校に携わる。2008年聖学院小学校教頭。2012年聖学院幼稚園園長。2017年第11代目聖学院小学校校長として着任(園長兼務)。

 今年で東日本大震災(以下震災)から10年がたちます。現在、聖学院大学に通う山下さんは聖学院小学校で5年生の時に震災を経験しました。大学では勉強の傍ら震災の被災地支援ボランティアに勤しんでいます。山下さんは2年前、ボランティア活動を通して学んだことを今の子どもたちに伝えたいと聖学院小学校で防災教室を開催しました。山下さんがボランティアに参加し、母校の子どもたちに何か伝えたいと思った背景には小学校で学んだ建学の精神があったそうです。60年間、聖学院が子どもたちに伝え続けてきたことを佐藤先生に、その教えを胸に卒業した生徒が今の子どもたちに伝えたいことを山下さんに語っていただきました。

聖学院小学校の歴史と、校舎にまつわるエピソード

佐藤 聖学院には当時、幼稚園と男女の中高があったのですが、その間の教育をつなぐ小学校がありませんでした。そこで先生方から強い要望があり聖学院小学校が誕生しました。当初は女子聖学院の敷地内でしたが、奇しくも女子聖学院が使う予定で立てていた建物があり、翌年からその建物を使うことになりました。その建物が2013年まで使っていた旧校舎です。 私がこの小学校に最初に赴任してから40年が経ちます。その中でも2014年の新校舎の建設は大きな出来事の一つです。聖学院小学校には長らく培われてきた「よく学ぶ よく遊ぶ よく祈る」という教育方針があります。これは建学の精神を子どもたちに分かりやすく伝えるための3つの柱です。友だちと協力して勉強することや自ら主体的に学ぶこと、友だちとの関わりの中で身につくこと、自分のためではなくて他者のために祈ること、聖学院小学校ではそういうことを大切にしています。新校舎建設においても、これらを具現化することを念頭におきました。大きな特徴の一つとしては、教室と廊下を隔てる壁をなくしました。オープンな空間を作ることでグループ学習やアクティブラーニングがしやすくなりました。また旧校舎の右側にあった講堂のアーチ形のデザインは聖学院小学校の象徴として親しまれていましたので新校舎にも引き継がれています。

山下 僕が在校していた頃はまだ旧校舎でした。よく廊下で友達と鬼ごっこしたり、図書館で読書したり、体育館で遊んだり、様々な思い出があります。一番覚えているのは小学校4年生の時に火災報知器を鳴らしてしまったことです。靴飛ばしで遊んでいたら偶然ボタンに命中してしまいました。

佐藤 そうした子はしょっちゅういます(笑)。聖学院小学校の子どもたちは元気が一つの取り柄でもありますから。山下くんも元気でした。

今でも覚えている東日本大震災当日の記憶

佐藤 震災があったのは山下くんが5年生の時で、その日、高学年の子どもたちと保護者を集めてハンドベルの発表会を講堂(現チャペル)でやっていました。講堂は最上階にあって天井が高い全面ガラス張りの建物でした。地震速報と同時に、すごい揺れが来て、子どもたちにしゃがんで背を低くするよう伝えたのを覚えています。子どもたちは本当に落ち着いていて、悲鳴ひとつ上げずに身を守る姿勢をとっていました。避難訓練が生きたのかな、と思いました。

山下 怖かったですね。

佐藤 ガラスには耐震補強で針金が入っていたので、割れるということは全くありませんでしたが、子どもたちに不安はあったと思います。それから揺れが収まって、寒い中、そのまま下校も出来ず、多くの子ども達が学校に残っていました。

山下 覚えています。当時、全面ガラス張りの壁面が波打っていました。ガラスがこれほど波打つものなのかと驚き、いつか割れるのでは、という恐怖と不安を感じました。ただ友達を見ると自然と冷静になり、みんなと同じように姿勢を低く保って揺れが収まるのを待っていました。

ボランティア活動のきっかけは建学の精神

山下 ボランティアに興味を持ったのは人の役にたちたいという思いがあったからです。そもそもは小学校のときに触れた建学の精神がきっかけだったと思います。それからずっと中学校も高校も聖学院なので、「神を仰ぎ 人に仕う」という精神が身近にあり、それが他者に貢献したいという思いにつながっていると感じます。

佐藤 先ほどの「よく学ぶ よく遊ぶ よく祈る」で言うと、他者のために祈るだけでは真に仕えていくことにはなりません。祈るだけではなく知識や技能を用いて他者のために働いて初めて仕えることになります。学ぶことや遊ぶことの先に「人に仕える」があるのが聖学院小学校の教育理念です。山下くんはそれがボランティアという行動にちゃんとつながったのだと思います。

自分の経験を子どもたちに還元するため防災教室を開催

山下 小学校で防災教室をやりたいと思ったのは、やはりこの場所で震災を経験した事が一番です。また小学生でも自分で自分の身を守り、さらにできれば他の人の安全も一緒に守って欲しい、という思いがあったからです。ボランティアで訪れた岩手県釜石では、小学生が率先して、他の小さな子どもたちを避難させたエピソードがあります。そのエピソードにふれて、大人はもちろん、子どもたちにも人を助けられることを知ってほしい、と強く感じました。 ボランティア活動で知ったことは本当にいろいろあります。実際に被災地に行ってみると、メディアが伝えていた印象とはだいぶ異なっていました。震災から7年以上たっているのに、まだまだ支援が足りないところもいっぱいありました。やはり自分から行動しないと何も分からないし始まらないと感じました。そのことも知ってほしくて小学校での防災教室を提案しました。

2019年9月に実施した防災教室の様子

佐藤 小学校の卒業生である山下くんがそうした志を持って帰ってきてくれたので、企画の段階からとても楽しみでした。また実体験の話は、未経験者の話と比べて、ずっと重みがあります。今の小学生は6年生でも震災当時1~2歳ですから震災の記憶がありません。そういう子たちが、自身の地震の経験と被災地をリアルタイムで見ていた経験をもつ卒業生から話を聞くのは、単なる防災教室とは違う意味があります。実際、山下くんの授業を見て、とても感動しましたし、来てもらって良かったと思いました。山下くんについても、私達がこうなって欲しいと願う人に育ってくれたのは本当に嬉しいですね。

山下 防災教室自体は、とても緊張しました。どうすれば小学生に伝わるのか、最初は友人と試行錯誤しながら進めていました。ただ事前に児童学科の先生や他の方にアドバイスをいただいたので、そのアドバイスを活用して無事に終えることができました。最後に子どもたちから一言コメントをもらったのですが、それを見る限り上手く伝わったようで、本当に良かったです。

佐藤 折角の良い機会なので、是非今後も続けていきたいですね。


60th Anniversary
60年間で変遷した聖学院小学校の校舎