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鼎談  岡村 直樹×清水 陽介×茂木 伸智

聖学院ASF No.59 取材日/2021年5月

「娘たちの笑顔のために」という思いから学校運営をサポートする父親たちの団体・パパプロ※。
その思いはご自身のご息女だけでなく、全生徒、学校全体のためにと次第に広がっていきます。
※パパプロ=「パパも女子聖、土曜プログラム」の略称

(左から)●岡村 直樹:1969年1月東京生まれ。女子聖学院中学校・ 高等学校保健体育科主任、運動会総務、記念祭総務、PTA事業部顧問、「パパプロ」顧問。 聖学院中学校・高等学校卒業。専門は剣道と健康科学。日頃から生徒達に伝えていることは「経験は財産」。趣味は古代ローマの研究と書道。●清水 陽介:娘は現在、女子聖学院高校2年生在学中。活動5年目の今年度よりパパプロ代表を務める。人材系企業にて法人の採用・個人の就業に携わる。一番の趣味はパパプロ活動。強みは力仕事と仕組み作り。伝統を継承しつつ、新しい試み進化に挑戦する。●茂木 伸智:娘は現在、女子聖学院中学2年生在学中。昨年、娘が入学後まもなくパパプロ活動に参加。 昨年、パパプロナイトや入試体験会にて保護者講話を経験。現職は金融機関勤務。趣味は書道、神輿担ぎ、自治会の役員(防災担当)。

女子聖学院中学校・高等学校(以下女 子聖学院中高)にはPTAの一団体と してパパプロと呼ばれる父親中心の組織があります。持ち回りではなく皆さん自分の意思で参加されています。学 校行事等の運営をサポートし、また高校3年生を激励する焼き芋会などパパプロ独自の企画もあります。パパプロは、参加されているお父さんたちの奉仕の精神がとても高い団体です。
パパプロとはどういう組織で、仕事が多忙を極める時期になぜ自ら進んでそこまで活動できるのか、バパプロ代表の清水陽介さん、メンバーの茂木伸智さん、女子聖学院中高の教員からは、行事を担当してパパプロに関わりの深い岡村直樹先生にお集まりいただきお話を伺いました。

■パパプロの成り立ち「娘たちの笑顔のために」

――パパプロとは、どのような組織ですか?

清水 パパプロは、PTAに複数ある組織のなかの公認団体です。ちょうど来年で、20周年を迎えます。いわゆる縁の下の力持ちとして、学校・PTAの行事の運営サポートや独自の企画を 行っています。「娘たちの笑顔のために」をモットーに、仕事を抱えながら活動するお父さんを中心としたボランティア集団で、学校や娘たちに対してどうしたらより良い環境を提供できるのか、メンバー自身が主体的に考えて試行錯誤しながら形にしています。具体的には、説明会や夏の女子聖体験日にお越しいただいた受験生とその保護者の方たちの誘導や安全性の確保、運動会の設営、誘導、警備。また記念祭で模擬店の出店などがあります。
元々はPTA総務部の方が、記念祭で後片付けを手伝っていたお父さんたちに呼びかけ活動の基盤ができました。それから自主的な活動が徐々に認知され、6年前に公認組織になりました。成り立ちからボランティア団体です。

岡村 パパプロの起ち上げに関係した先生の話では、女子聖学院中高の行事で、力仕事なら手伝っていけるのではないか、ということで始められたそうです。

■「娘のために」から「学校のために」へと変わっていく 教員の日々の努力に触れ、学校自体を応援したくなる

――お二人が、パパブロの活動を始めたきっかけを教えて下さい。

茂木 私の場合は、入学前の学校説明会でパパプロの存在は知ってました。 ただ娘の小学校在校時に、パパプロに似た「親父の会」というグループに参加していた経験から、力仕事中心のイメージを持っていて、これといって興味を持ちませんでした。正直、入学前は仕事の多忙を考慮し、中高6年間はもういいか、という気持ちでした。ところが去年コロナ禍で入学式が6月になり、娘と色々な思いを抱えながら初登校した時に、パパプロの皆さんが緑のジャンパーを着てコロナ禍にも関わらず、忙しい時間を割いてあたたかく迎えてくださいました。その姿を見て、そこまで学校のために尽くしているのかと感激し同時に尊敬しました。
パパプロには、力仕事だけではなく、様々な企画があって、娘のために、色々なことを考えながら楽しく活動しています。その姿勢に賛同し参加しました。

清水 私も娘の幼稚園、小学校と行事の片付けを手伝っていました。女子聖学院中高に入った当時はパパプロの存在を知らなかったのですが、妻に面白そうなのがあるよ、とチラシを渡され たのがきっかけで知りました。
入会の理由は、自分の年齢的にも仕事が多忙を極める時期だからこそ、娘との関わりをしっかり持ちたいという思いと、娘がお世話になる学校、友だちや先生に興味があったからです。当時は「娘のために」という気持ちからスタートしました。「娘と自分のために」 かもしれません。
娘の成長に合わせて、「娘のために」 が、中学3年生くらいから「娘たちのために」へ変わり、もう少したって「学校のために」という思いになっていきました。さらにコロナ禍で、「先生たちのために」できることはないか、と考えるようになりました。

茂木 去年、受験生のための保護者説明会で講話する機会をいただきました。自分が話す意義を考えると、やはり保護者から見た学校の魅力という点に行き着きます。そういうことを考えていくうちに徐々に「娘のために」だけではなく「学校のために」という視点も生まれてきた気がします。

岡村 昨年は学校説明会で、広報の担当とパパプロさんとの対談をライブ配信したこともあります。広報面でもパパプロさんには本当にお世話になっています。 本校では保護者の方々の学校への関心が非常に高いです。 パパプロはもちろんのこと、女子聖学院中高のPTA活動は、ボランティア精神を絵に描いたような組織で、学校側としてもとても助かっています。

――「学校のために」と思える理由はなんですか?

清水 なんででしょうね?

一同 (笑)

清水 女子聖学院中高は子どもたちの自主性をとても尊重してくれます。しかし、自主性は、一歩間違えると放任になりがちです。女子聖学院中高の先生方は、ギリギリまで我慢して、生徒に決めさせて見守っています。その上で、ちょっとおかしいときは、上手く修正してくださる。新型コロナウィルス対策においても、皆さんの安全のために、生徒の帰宅後に消毒作業をされたり、様々に尽力されてます。それでも生徒の前では、疲れを見せず笑うようにしていると耳にしました。そういう姿を拝見したりお話を伺うと、我々も先生に何かできないか、学校に対して何かできないか、という思いになります。 パパプロをやっていなかったら学校に足を運んでおらず、そこにも気づかなかったなと思います。

岡村 ありがたい限りです。学校行事は、生徒主体で行うのが本校の特徴ですが、清水さんの仰る通り、必ず生徒が結論を出すところまでつきあいます。実際に去年の記念祭も、生徒たちがやると決めました。その決断で学校サイドも腹をくくりました。学校だけではなくパパプロさんやPTAの皆さんも生徒の結論を尊重し、支援してくださったことで開催できました。生徒のやる気と保護者の支えがなかったら、実現しなかったと思います。
その際も、警備やテントの設営などパパプロさんから自発的に声をかけていただき、大変助かりました。

■OBの方々が築いてきたパパプロと学校の関係

――パパプロと教員の心の距離が近いですね。

清水 おこがましいですが(笑)。見ている方向性が一緒のように思っています。 我々に一番に求められることと先生方が腐心されることは、娘たちの安心と安全の確保と彼女たちができない裏方の仕事です。その点において我々と先生たちの間で大きなズレはないと感じています。そのためパパブロ側から提案しやすいところもあります。

茂木 パパプロは歴史も長く、かつOBの方が積極的に参加してくださるので、これまでに築いた学校との関係性が途切れません。そこがすごいところです。

清水 他のPTAの組織と異なり(他の組織は任期が1年)、パパプロは入ったら本人が辞めるまで会員です。現役のお父さんは約30名ですが、登録しているOBを含めると約90名になります。 OBの方の参加頻度は下がって行きますが、熱心な方も多く、マインドや伝統は、しっかり受け継がれています。

茂木 パパプロでは、独自の企画とし て高校3年生の激励のために「焼き芋会」をやっています。また中学3年生の七夕で、3年後の自分にメッセージを書くイベントもやっています。この2つのイベントは連動していて、七夕で書いたメッセージを3年後の「焼き芋会」の時に焼き芋と一緒に渡しています。そういう企画を学校が了承してくださるから、私たちもパパプロの活動を楽しめますし、より「学校のために」と思うようになります。これはOBの方たちがこれまでに築いてくださった学校との信頼関係があってこそだと思います。

岡村 一般的に、保護者の学校への関わりはどうしても義務的なところがあるという話を聞きますが、パパプロさんに関しては義務感を全く感じません。それは非常にありがたいと思っています。それゆえに私もパパプロさんが楽しみながら活動できる環境整備を心がけています。
ところでパパプロの活動はご自身の学生時代のクラブ活動とは違う感覚ですか?

茂木 パパプロはやはり奉仕活動だと思います。クラブ活動は自分が主体ですが、パパプロは娘たちのため、学校のためというのが前提で、その「誰かのため」の活動自体が楽しいから参加しています。だから義務感もないですし、むしろ忙しい中でなんとかスケジュールを調整して参加できないだろうかと思うようになっていきます。そういう良いサイクルがあります。

清水 他にはないですよね。

茂木 はい。

清水茂木 (笑)

茂木 ボランティアですよね。

清水 そうですね。義務という感覚はないですね。

■「生徒を、先生を明るくしたい」 モミの木プロジェクト

茂木 2020年のコロナ禍において、学校の行事が次々中止になっていきました。そんな中、子どもたちに何とか明るい気持ちになってほしいという思いでモミの木を植樹しました。

清水 モミの木プロジェクトは、植樹をしてクリスマスの時期にイルミネーションを飾り付け、点灯させる企画です。本当は2021年にやろうと思っていました。そうしたらコロナが起こり、本当に学校が暗かったんですね。そこで、何とか前倒しできないかなと 夏前ぐらいに思い立って、皆でできる方法を考えました。やる以上はしっかりしたものを学校に提供したいし、10年先も20年先も成長するような木を植えたかったので、業者さんや植える場所の選定など大変でした。しかしOBの方々のご協力もありクリスマス前には点灯させることができました。

茂木 大変でした。

清水  生徒たちだけでなく、先生や職員の方々の気持ちも明るくしたいと思い取り組みました。先生たちにも喜んでいただけた事が嬉しかったです。また高校3年生の「焼き芋会」(11月)の時にフライングでちょっとイルミネーションを点けました。そうしたら生徒たちがとても喜んでモミの木に駆け寄って行ったんです。それが私たちにとっては冥利につきる最高の瞬間でした。皆さん、涙しました。

茂木 パパプロに入ってまだ1年足らずの私がこういう企画に参加できたのは非常に光栄でした。長い人生においてもそうはない非常に良い経験をさせていただいていると思いました。とても温かい活動です。

■今後のパパプロの展望

清水 「パパプロがあるから女子聖を選びました」と言われる存在になりたいと思います。パパプロの存在自体が、他校との差別化になり、入学志望者の増加に寄与できたら嬉しいです。またパパプロのメンバー同士で、生徒に対し仕事観を伝える機会が持てたら 素敵だとよく話をしています。パパプロには本当に様々な職業の方々が集っています。私が聞いてもワクワクするような仕事をされている方もいます。 生徒にとって、進路や将来について考える機会を提供できるのではないかと思います。卒業後も就職の相談などができたら良いですね。

茂木 私はパパプロに入ったばかりということもあり、こうしていきたいというより、私が今経験している素晴らしい活動をしっかり継続、継承していきたいです。

岡村 盤石なものを継承していくということが一番重要で一番難しいことかもしれません。

清水 20年近くかけて築いてきた信頼をしっかり守りながら、一方でボランティア精神に関してはいくらでも高めて良いと思っているので、よく気づく人、気づいたことに対して考えたり行動できる人たちを増やしていきたいです。