「いきいきした温かい小社会として」

2015/03/10   先生のことば

keyaki_444 朝の新宿駅、いつものように中央線から山手線に急ぐ私の前を、これまたいつものようにスマホをにらみ海藻のようにゆらぎながらマイペースで歩く若者たち…だけではないおじさん、おばさん。見慣れた光景ながら、私はいつも不思議に思うのです。私が学生だった頃、都会のターミナル駅では人々の歩くスピードが今よりもっと早かった(と私は感じています)にもかかわらず、それぞれお互いに微妙な距離感をはかりながら間隙を縫ってスイスイと、ぶつかることもなく移動したものでした。

 1979年にウォークマンが発売されました。その時のキャッチコピーが「これ、部屋から出たがるステレオなのね」というものでした。ウォークマンは、1986年にはオックスフォード・イングリッシュ・ディクショナリーにWalkmanとして掲載されるほど世界的に広がりましたが、その頃のことを調べてみると、これを持った人たちの多くは「ウォークマンをすると景色が変わって見えるぞ」と言っていたそうです。当時、ウォークマンは画期的な商品で、私もその恩恵を受けたひとりでした。ただ、コミュニケーションという観点からとらえると、ヘッドフォンで外の音から遮断され、自分の気に入った音楽に浸るということは、もしかすると、部屋から出たがる…というよりも、自分の部屋ごと外に出た状態なのかもしれません。

 その後、ウォークマンのみならず、最先端技術を駆使して、携帯電話、スマホ、ゲーム機器など様々なものが世に出されました。今では、殆どの人がそのどれかを持っているのでしょうし、もちろん使い方次第なのです。ただ、ヘッドフォンを使用しないまでもそれらに集中し、個々の世界を保持しつつ自分の部屋ごと外に出てきたような状態の人がいくらたくさん集まっていても、それは社会とは言えないのかもしれません。

 私は、聖学院小学校が子どもたちの存在を大切にし、いきいきとした温かい小社会でありたいと願っています。新しい校舎も、各学年の居場所が保たれたうえで、様々な学年の子どもたちが交わりを深められるよう、工夫を重ねて設計されています。また、広い校舎の中でふとすれ違う、私たちの思いを遥かに超えた出会いの瞬間も、大切にしたいのです。授業や遊び、スクールランチなど様々な活動のなかで、一人ひとりが与えられた力を、その人らしいやり方で出し合い工夫し合い、それを紡ぎ合わせることでお互いがどれほど掛け替えのない存在であるかを、子どもたちと一緒に味わえる学校にしていきたいのです。

 1年間の稔りの時を迎えました。それぞれがこれまでに育んできた絆を大切にし、残りの日々を豊かに過ごしていってほしいと願っています。

校長 村山順吉

学校だより「けやき」第444号より

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