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&Talk 聖学院の英語教育

座談者プロフィール

藤原 真知子

●聖学院大学総合研究所客員講師 ●聖学院大学総合研究所特任講師

東京YMCA児童英語教育ディレクターを経て現職。聖学院小学校英語講師(2003~)、世田谷区立用賀小学校英語教育アドバイザー(2007~)、Otawa大学Cross-Cultural Program担当(1989~)。児童英語講師養成講座多数担当。日本CLIL教育学会監事。

滝澤 佳代子

●女子聖学院中学校・高等学校英語科教諭●女子聖学院中学校・高等学校国際教育委員長

マレーシア、クアラルンプールの進学塾の所長・理事として、帰国生の中、高、大学受験指導に携わる。帰国後、日本国際交流振興会(JFIE)事務局次長、(株)アイエスエイ 留学センター長、広尾学園中学校高等学校講師を経て現職。

東 仁美

●聖学院大学人文学部欧米文化学科教授

専門は小学校英語教育。小学校英語指導者認定協議会(J-SHINE)理事、トレーナー検定委員。欧米文化学科の児童英語教育科目や児童学科の小学校教員養成課程での必修科目を担当する他、都内の小学校での教員研修にも携わっている。

 

小学校で英語が教科化します。
指導者養成と現場ではどのような変化がありますか?

 聖学院大学では「小学校英語指導者養成講座※1」(以下養成講座)を約20年前から開催しています。小学校で英語を教える先生を支援する講座です。今年は申込開始2週間で50名の定員を超え、最終的な参加者は63名でした。小学校での英語の教科化への不安と、指導力・英語力の両面で能力を磨きたいという想いを強く感じました。一方で参加される先生方の英語力も年々上がっていて、ネイティブの先生が英語のみで話す講座でも、英語での冗談に対して笑いがおきます。
また、講師への質問の内容も変わってきました。従来は直近の授業に活かすためのテクニカルな質問が多かったのですが、来年配付される検定教科書や評価のことなど長期的な課題についての質問が増えています。

※1 小学校英語指導者養成講座
約20年前から聖学院大学で開催されてきた小学校英語の指導者養成講座です。小学校の学習指導要領に英語が組み込まれましたが、それまでは小学校での英語の指導方法の指針がありませんでした。そのため、主に小学校の教員を対象として、大学の研究をフィードバックし指導法を身につけてもらう目的で開催されてきました。また、小学校の新指導要領導入へ向けて、その解説も行なっています。
小学校ではどのような英語教育をしていますか?

藤原 聖学院小学校では全学年に週2回の英語の授業があります。どのクラスにもネイティブの先生が入っていてコミュニケーションを楽しみながら、聞く・話す・読む・書くの4技能を学んでいきます。またCLIL(クリル)※2という、内容と言語を統合した学びを導入しています。例えば1年生は生活科で行う朝顔の観察と並行して、朝顔の成長過程に合わせた英語を歌、動作、ワークシート、グループ活動、思考活動、会話を通して学んでいきます。そうすると、つぼみが出たときは、“I see buds! Two buds!”など自然と子どもたちから言葉が出てきます。新学習指導要領※3についてのご質問ですが、キーワード、「主体的・対話的で深い学び」は、まさに聖学院小学校の英語教育で長いこと力を入れてきたことです。

 養成講座でも何度も藤原先生とバード先生にCLILの講座を持っていただいてます。歌などのCLILの実践は受講者にたいへんな人気です。

滝澤 本で読んだだけの内容は忘れてしまいがちですが、身体を動かしたりある種の体験を伴って身に付けると定着率が高いです。そのCLILを学んできた小学生が女子聖学院に入学してくると英語が頭に入りやすいように思います。

 指導者養成の立場からすると、公立小学校の先生に専門的な研究をする余裕がなかなかないので、藤原先生には聖学院小学校の実践をどんどん発信してもらえたらいいな、と強く思います。

※2 CLIL(クリル)
CLIL(Content and Language Integrated Learning: 内容言語統合型学習)は、教科で学んでいる内容やトピックと言語の学習を統合した指導法。4Cと呼ばれるContent(教科/トピック)・Communication(言語)・Cognition(思考)・Culture/Community(異文化/協働学習)を結びつけながら、4スキルズ(聞く・話す・読む・書く)を高める。
※3 小学校の新学習指導要領
現行の学習指導要領では、2009年から5・6年生で「外国語活動」という「聞く」「話す」を中心としたコミュニケーションの時間が週1時間(年間35時間)必修化されています。2020年に全面実施となる新学習指導要領では、その「外国語活動」が3・4年生からとなり、5・6年生では教科としての「外国語」が週2時間程度(年間70時間)始まります。授業の中では4技能(聞く・話す・読む・書く)が指導されます。
中学ではどのようなところを大切にしていますか?

滝澤 中学では、英語圏で育った生徒も初めて英語を学ぶ生徒もいるので、このギャップを授業の中でどう埋めるかが難しいです。今まで英語を使い慣れてきた生徒にとって授業が居心地の良い環境であってほしいし、ほぼ初めて英語を学習する生徒に不安を持たせない方策も大事です。「絶対に一人も置いていかない」ことを前提に考えています。難しいタスクはグループワークで取り組ませることが多いです。そうすると元々得意な生徒は、他の生徒に教えてくれるので教室に一体感が生まれます。
またテストの難易度を上げることはいくらでもできるので、できる生徒にはつい難しい問題を解かせたくなります。しかし、テストよりも毎回の授業内の活動に負荷をもっとかけて、あらゆる生徒の授業への集中度・参加度を高めていくほうが重要です。中2ぐらいまでは平均点が高めになるようにテストの問題を作り、英語を心から楽しんで、もっとやりたいというモチベーションが生まれるようにしています。

大学入試の英語も変わります。
高校でポイントとなるところはどこですか?

滝澤 高校ではぐっと学習内容が難しくなります。4技能をバランス良く伸ばす必要があるのですが、理解するのに手一杯になり、生徒も今どこを伸ばしているかわからなくなります。生徒に何の力を付けさせているのかを意識させながら、指導していく必要があります。教員も学習指導要領の求める「4技能を使った思考力」「グローバル」などを目指す結果、コミュニカティブな英語やグループ学習などが活動のための活動になりがちです。教員も何のためにやるのか理解し納得してから生徒に教えることが重要になります。
また大学受験においては外部試験が導入されはじめています。混乱もありますが戦術的に戦えるようになるとも言えます。外部試験ごとの細部には特徴があるので自分の得意分野はどれかを分析すれば有利になります。分析して、自分の長所と短所を見極める作業は悪いことではありません。そうは言っても生徒の負担は増えると思います。

 

 

 

 

 

 

 

聖学院小学校では児童が物怖じしませんね

藤原 そうですね。アメリカから来た大学生が小学校に遊びに来たときは、児童が次々集まって話しかけていました。大学生に「すごく積極的ですね」と褒められました。また成田のパイロットが泊まるホテルで英語キャンプ(英語のみを使う合宿)をしたときは児童が外国人の方に「食事を一緒にしませんか」とお誘いしたり、一緒にカルタをしたり日本の文化を積極的に発信していました。外国の方が来たら臆さず目を見て話すことができるのが聖学院の小学生かな、と思います。
また1年生から聞くことを重視し、聞いて理解できるから話しかけられるということがあると思います。聞けると、文章で返せなくても、イエスとかノーとか、ウーンとか言えるんですね。それでコミュニケーションができる。英語キャンプの外国人スタッフにも「意思疎通ができて楽しかったです」というお話をいただきました。毎日、ネイティブの先生と廊下で会えば話しますし、日々の積み重ねが効果を上げています。

 

 

 

 

 

 

 小学校学習指導要領では、今まで5・6年生からスタートだったものが、3・4年生からの必修化になって、実際は1年生から実施する学校も増えています。聖学院小学校とは異なり体系立ったプログラムがない中で、何となく英語を取り入れようという学校もあるので、私は「英語と幸せな出会いをさせて欲しい」とよく言います。養成の立場として、先生が「嫌だな、教えられない」などと思いながら行う授業では、子どもたちが英語にポジティブな印象を持てません。
一方、身振り手振りを付けながら、児童への質問を交えて楽しく授業をしている先生がいます。目の前の子どもたちを理解している担任だからこそできる指導方法だと思います。英語が得意じゃなくても「幸せな出会い」は作れます。英語のスタートが低年齢化していく中で、英語嫌いまで低年齢化しないようにすることが大事です。

滝澤 中学生になると、かなりの単語を覚えなければなりません。従来は「単語や例文は家で書いて覚えてくる」という考え方でしたが、今では授業で覚えるようにしています。すぐに書くではなく、とにかく言って言って、文章を覚えて、正しい発音で言えるよう何度も言ってから、初めて書きます。書く前に難しいスペルにマーカーでラインを引いて、後は見ずに1回だけ授業で書きます。1回しか書いていませんが、その1度を書くまでに、徹底して言えるようになるまで、しっかり見て、注意して、と頭をつかって書いているので、7~8分時間をさくだけでパラグラフ全文が書けるようになります。そうすると「これだけやればできるんだ。だったらやった方が良い」という考えになり学習スタイルが定着して、正のスパイラルになります。そこまで教員が付き合い続ける必要があります。単語学習は一番つらいところだから、共有の場にしています。

 英語は自己実現のきっかけだと思います。だからTOEICの授業の時に、大げさですが、「これは生き方の授業だよ」と言うようにしてます。「TOEICの点数が目標ではなくて、今までできなかった事ができるようになるのが大切だから」と。そういう言い方をするとツボにはまって、今まで無理と思っていた英語が急にできるようになる学生が毎年います。中にはTOEICがほぼ満点近く取れて、提携校に1年間留学できたりする学生もいます。いつでも学び直しができるというのは聖学院全体に通じる面倒見の良さの部分だと思います。小中高大学を問わず「教員があきらめない」「全員連れて行く」というところに聖学院の精神があるように思います。

 

 

 

 

 

 

滝澤 中高では探究型学習を行なっています。その中で生徒は様々なグローバル・イシューに興味を持って、自分なりに関心を深めていきます。その関わりの中で英語が必要になってきます。「ここで必要なんだ」と知る事は、モチベーションとして大きいし、ツールとしての英語を知る機会として非常に良い事ですが、グローバル人材になることが目的ではありません。グローバル人材として、その先に果たすべき役割があります。何故グローバル人材になるのか、それはまさに”Serve His People”(人に仕う)ということだと思います。グローバル人材になるためだけの教育をしない。そこに目的があるのが、聖学院の教育の素晴らしさであり、教育者のよろこびです。

学院内での連携もできそうですね

藤原 女子聖学院には素晴らしいイングリッシュラウンジ※4があるので、小学生を連れてきて楽しい時間を過ごしたり、小中のネイティブの先生が入れ換わって授業をするといった形などで交流を持てば、もっと小中の連携が深まるのではないでしょうか。

滝澤 そうですね。

 みどり幼稚園で英語のレッスンを担当しているアリーダ・クラウス先生が、大学の児童英語教育のクラスを担当されているので、幼稚園のレッスンを見学したり、実践の場としてつながっています。
また今年から児童学科で、幼稚園教諭や保育士になる学生たちを対象に、子どもに英語を教えるための「Smile English(幼児の英語)」という授業科目ができました。ここでも学外授業でみどり幼稚園の授業を見学などできたら、と思います。昨年は、中高英語科教員養成課程の学生が聖学院中高の授業を見学に行きました。

藤原 小学校にも希望者がいればぜひ見学に来てください。学生も一緒に授業に参加できれば、児童たちも「お兄さん、お姉さんが来てくれた」と親近感を持つでしょうし、学生にも良い経験になると思います。これを機会に広がっていければ良いですね。

※4 イングリッシュラウンジ
昼休みや放課後に毎日開放しているスペースで英語の雑誌やDVDがある他、ネイティブの教員とのコミュニケーションも楽しめます。

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