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先生のことば

「種子の成長」

緑のオリーブ No.07

 私は以前農業関係の研究機関に所属していましたが、一般に作物の収量は前年の収穫後の作業に大きく依存します。それはよく『土作り』と言われるものです。作物は土から色々な栄養分を吸収し育ちます。ですから収穫後の土は一年中で最も痩せ細った状態となっています。収穫後、耕し、水分を補給し、必要な栄養を与えるなど土を整え、次の種まきに備えて必要なことを一つ一つ確実にこなしていきます。良い土ができていれば何を作ってもよくできるからです。しかし、それは農家それぞれに方法が異なり、そのために長い時間と経験を要するものでもあります。

 私は園長の役割を担うようになり「子育ては農業に似ている」と感じることが多くなりました。第一に農家はその作物を心から愛し大切に育てようとします。そのための土作りも決して手を抜きません。土作りは家庭などの環境を整えることに似ているかも知れません。しかし、作物は肥料をたくさんやって過保護にすると病気に弱くなり、根の張りが悪くなるため軟弱にもなります。逆に、足りない場合には作物自体が弱くなり、一気に虫がついたりします。つまりバランスのよい生育をさせることが大切なのです。農家は、その作物が元気にすくすく育つ環境を整えることが重要な唯一の仕事といえます。特に大切なのは根がしっかり張り、自ら成長できるようになるまでの育て方です。そうすれば作物の成長は多少の気候の影響などがあったとしても、その作物(種子)自身が自ら成長するようになるのです。種子にはそのための力が本来備わっているのです。

 最近野菜工場という言葉を時々耳にします。それは土を使わない農業です。つまり土作りをしなくとも、作物にとって必要な環境を人工的に作り出すのです。そこでは外的な要因が入ることを極力排除し、誰が作っても同じような優秀な(?)作物ができるのです。生産量を上げ労力を可能な限り削減するための人間の知恵ではありますが、将来子育てもそのようになっていくのでしょうか。毎日子ども達を見ていて、人間はそれぞれ異なる個性を持つ存在であることを改めて感じます。つまり土作りの方法は一人一人異なるのです。野菜工場のように問題のある種子は取り除かれ、画一的な教育システムで作り上げられる優秀な大人が生産されていくような社会ではなく、一つ一つの種子の成長する力を信じ大切にするような社会であって欲しいと思います。

園長  山川 秀人

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