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先生のことば

「生きる喜びが感じられる生活を」

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緑のオリーブ No.008

 この夏、知り合いの翻訳家の方が、我が家に数冊の児童書(YA作品)をくださいました。いずれも訳語がリズミカルで、読み始めたら止まらなくなるような魅力的な作品に仕上がっていました。ここでその一冊をご紹介し、共に保育・教育を考える糸口にできたら、と思います。

 作品名は『フェリックスとゼルダ』(モーリス・グライツマン著/原田勝訳、あすなろ書房)。その舞台は、1942年、第二次世界大戦中のポーランドです。600万人ものユダヤ人がナチス・ドイツに虐殺されたといわれる、あのホロコーストを生きた、10歳のユダヤ人少年フェリックス。そして、彼が一人旅の途上で出会った幼い少女ゼルダ。この二人を中心に展開する冒険物語です。この世界大戦からすでに60年以上が過ぎ、日本でも当時を知る人はわずかになった今、ましてヨーロッパの状況をつぶさに知る機会などいよいよ乏しい私たちがこの作品の読者です。当時の悲惨な状況を10歳の少年の目を通して描くという作家の手法が、まさに戦後生まれの私たちをその時代に近づかせてくれていること、また、子どもの理解を超えるような非常事態を前にしながらどこまでも楽観的に対処しようとする主人公フェリックスのひたむきさが、私たちをしてその人々の暗い運命に向き合わせてくれているということに、読み終えて初めて気づかされる私でした。

 この同じ1942年の8月、実際にユダヤ人孤児たちと強制収容所へ向かう死の行進を自ら望んで行ったといわれるポーランド人教育者、J.コルチャックの言葉に耳を傾けてみましょう。

 「わが子について謙虚な質問をしていたはずの親が、やがて大きな顔をし始める。子どもが空腹でないのに食べなさいという。嫌がって泣く子どもに(なぜ嫌なのかを聞くこともなく)床に入りなさいという。大人になってうまく生活できるようにするために今はそうしなければいけないという。・・・しかし、子どもは今日のために生きるのであって、明日のためではない。」

 いつ終わりの時が来るとしても、いつでも今日の自分で十分であるように、という願いは、大人にも子どもにも共通に与えられている、聖書のメッセージでもあります。その願いを前提として、今日から明日へと生きる充実のために自らを律する生活をすること、まず大人である私たちの問題として考えてみましょう。

園長補佐  佐治 由美子

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